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緑内障(りょくないしょう)とは何らかの原因によって、眼の神経(視神経(ししんけい))が障害され、それにともなって見える範囲(視野(しや))が狭くなる疾患のことをいいます。
わが国において、2000〜2001年にかけて行われた大規模な疫学調査(多治見スタディ)によると、緑内障の有病率は、40歳以上で5.0%でした。つまり40歳以上の20人に1人の方が罹患しているという計算になります。これに緑内障疑いの例を含めると7.5%にもなります。そのうち治療をきちんと受けられている方の割合はわずかで、約9割以上のかたは未治療であるともいわれています。その一方で緑内障はわが国における身体障害者認定原因疾患の第一位であり、失明する危険性もあるため、早期発見、早期治療が望まれます。早期に治療を開始することで、失明を避けられる可能性が十分あることから、最近では啓蒙活動がさかんになりつつあります。
緑内障の病態はさまざまで、細かく分類されています。ここでは、わかりやすいように5つのタイプを紹介します。それぞれのタイプによって、治療法が異なるため、医師による正しい診断をうけ、自分の緑内障がどのタイプか知る必要があります。
原発(げんぱつ)緑内障
ほかの原因がなく発症する緑内障で、以下の3タイプに分かれます。
原発閉塞隅角緑内障(げんぱつへいそくぐうかくりょくないしょう)
隅角(ぐうかく)(図2)が塞がれることで眼圧が上昇します。 急性発作を起こした場合、眼痛や頭痛といった自覚症状が出現します。
原発開放隅角緑内障(げんぱつかいほうぐうかくりょくないしょう)
隅角は狭くないものの(開放隅角)、徐々に眼圧が上昇します。自覚症状はほとんどなく、知らず知らずのうちに視野狭窄を生じるのが特徴です。
正常眼圧緑内障(せいじょうがんあつりょくないしょう)
開放隅角で、かつ眼圧も正常範囲である緑内障。 日本人の緑内障のうち約70%がこのタイプであるとされています。
続発緑内障(ぞくはつりょくないしょう)
ほかの病気などが原因となって生じる緑内障です。
発達(はったつ)緑内障
胎内(たいない)においての眼の発達が不十分であったため、生じる緑内障です。 早発性と遅発性があり、発症する年齢はまちまちです。
診断および治療法の選択には以下の検査が必須です。
1.眼圧測定 |
角膜(かくまく)に直接器具をあてて測定するタイプと、風を角膜に吹き付けることで簡易的に測定するタイプがあります。小児や赤ちゃんなどには特殊な器械で検査します。 |
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2.隅角検査 (ぐうかくけんさ) |
隅角鏡というレンズを角膜にのせて、房水の流出する場所を観察します。緑内障の分類をするために重要な検査です。 |
3.眼底検査 |
視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)(図3)の観察をします。視野障害にさきだって、必ず視神経乳頭が緑内障性の変化をするので早期発見には必要です。 |
4.視野測定 |
進行度を知るために必要です。器械で測定するタイプと、専門的な知識をもつ視能訓練士が行うタイプのものがあります。 |
5.角膜厚測定 (かくまくこうそくてい) |
眼圧測定結果は角膜の厚みに影響を受けることから、この検査が必要なことがあります。 |
6.光干渉断層計 (OCT) |
最近注目されている方法で極初期緑内障から、その進行も短時間で非侵襲的に検査できます。 |
緑内障で失った視野をもとに戻すことはできません。したがって、緑内障の治療目的は病気の進行をできるだけ緩やかにさせることです。緑内障にたいする治療のうち、証拠に基づいた唯一の治療は、眼圧を下降させることで、それによって病気の進行を緩やかにさせることが証明されています。ここで、眼圧とは眼の硬さのことをいい、眼の中にある透明な液体である房水(ぼうすい)でコントロールされています。毛様体(もうようたい)で産生された房水は、瞳孔(どうこう)をとおって隅角(ぐうかく)へ流れ、最終的には静脈に流れ出ます。
房水の流出と産生のバランスが保たれることで、一定した眼圧がえられますが、何らかの原因で流出抵抗が生じた場合、眼圧はたちまち上昇します。
1.薬による治療 |
房水の産生を抑える、あるいは流出を促す点眼薬があります。内服薬や点滴にて眼圧降下させることもあります。 |
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2.レーザー治療 |
隅角にある房水の流出部にレーザーを照射することで、より房水の排出を促します。当院では選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)を施行することが可能です。緑内障のタイプによって、レーザー治療が有効な場合があります。 |
3.手術治療 |
当院で2010年1月から12月までの一年間に行われた緑内障手術は190件でした。緑内障手術の術式はたくさんの種類があり、病態や進行の程度によって選択されています。以下に代表的な手術の種類を紹介します。
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